研究者詳細

教職員基本情報
氏名
Name
加藤 久美子 ( カトウ クミコ , KATO Kumiko )
所属
Organization
人文学部キリスト教学科
職名
Academic Title
教授
専攻分野
Area of specialization

旧約学、宗教学・宗教史学

学会活動
Academic societies

日本宗教学会 1991年4月-現在(会員;2022年9月-現在評議員)
日本聖書学研究所 1991年4月-2016年3月(会員)
日本聖書学研究所 2016年4月-現在(所員;2024年4月-現在役員)
日本オリエント学会 1996年4月-現在(正会員)
日本旧約学会 1996年4月-現在(会員;2020年10月-2022年10月;2023年10月-現在委員)

著書・学術論文数
No. of books/academic articles
総数 total number (17)
著書数 books (3)
学術論文数 articles (14)

出身学校
学校名
Univ.
卒業年月(日)
Date of Graduation
卒業区分
Graduation
   Classification2
東京大学文学部宗教学宗教史学  1988年03月  卒業 
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出身大学院
大学院名
Grad. School
修了課程
Courses
   Completed
修了年月(日)
Date of Completion
修了区分
Completion
   Classification
東京大学大学院人文科学研究科宗教学宗教史学 博士課程  1997年03月  単位取得満期退学 
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取得学位
     
学位区分
Degree
   Classification
取得学位名
Degree name
学位論文名
Title of Thesis
学位授与機関
Organization
   Conferring the Degree
取得年月(日)
Date of Acquisition
博士 博士(文学)  文脈の中のアフォリズム—ヘブライ語聖書箴言10章1節−22章16節の研究—  東京大学大学院  2019年03月25日 
修士 文学修士  コーヘレトの知恵  東京大学大学院  1991年03月29日 
学士 学士(文学)  コーヘレト書における「神を恐れること」  東京大学 1988年03月 
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研究経歴
長期研究/短期研究
Long or Short
   Term research
研究課題名
Research Topic
長期研究  第二神殿期ユダヤ教における教訓及びアフォリズム 

概要(Abstract) 古代西アジア・エジプトの書記文化において育成された文学ジャンルである教訓及びアフォリズムが第二神殿期ユダヤ教においていかなる思想を伝える媒体となったかを研究する。 

短期研究  マソラ本文箴言における文学形式と思想 

概要(Abstract) 第二神殿期ユダヤ教において形成された教訓及びアフォリズムの作品である箴言の文学形式と思想を研究する。箴言はマソラ本文といくつかの古代語訳版によって伝承されているが、それらの中で第二神殿期の原マソラ本文をよく保存していると考えられるマソラ本文箴言の研究に取り組む。 

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著書
年度
Year
著書名
Title of the books
著書形態
Form of Book
NeoCILIUS
   請求番号/資料ID
Request No
出版機関名 Publishing organization,判型 Book Size,頁数 No. of pp.,発行年月(日) Date
2023  文脈の中のアフォリズム 箴言10–12章の構成の研究(南山大学学術叢書)  単著   
日本キリスト教団出版局  , A5  , 350 p.  , 2024/02/25   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2007  Kompendium. Feministische Bibelauslegung. Sonderausgabe. 3. Auflage  共著   
Christian Kaiser/ Gütersloher Verlagshaus  , 未設定  , 832 p.  , 2007   

概要(Abstract) L.ショットロフ、M.-T.ヴァッカー編『フェミニスト視点による聖書解釈ハンドブック』、執筆担当部分「コヘレト書:女のいない人が独り」。
本稿では、フェミニスト視点によるコヘレト書解釈の2つの主要な問題を論じ、結びに今後の課題を指摘する。(1)人にとっての益と善は何かと問うコヘレト書では、2つの叙述形式(すなわち1人の男の省察と人間の生の条件をうたう詩)が組み合わされている。これらを区別し、それぞれが提示する「人間の生」がどのような人々の経験に基づくかを明らかにしなければならない。これらはいずれも男性の経験に依拠する面をもつが、1人称の省察では考察の対象になる男たちの生活様式には批判的視線が向けられている。(2)女に言及する2つの言葉を含む段落(コヘ7:23-29)はミソジニーの表明だとみなされることが多いが、文学的構造と創世記への暗示をふまえれば、これはむしろ、不正や悪をもたらすのは女だという主張(コヘ7:26)や悪と死のはじまりの責任を女に負わせる女性蔑視の創世記解釈(シラ25:24)を批判していると解釈できる。(今後の課題)人に可能な唯一の幸福として、パン、ワイン、香油、愛する女と共にある人生を楽しめ(コヘ9:7-10)と勧める言葉の背景には、西アジア・東地中海世界の宴の文化がある。フェミニスト視点からこの勧めを評価するためにはこの文化における女性の役割と貢献を明らかにする必要がある。 

備考(Remarks) L. Schottroff, M.-Th. Wacker (編)。執筆担当部分 “Das Buch Kohelet. Der Mensch allein, ohne Frau”, pp. 221-232. 初版1998年の改訂第2版1999年に基づくペーパーバック版. 

2005  共生と平和への道—報復の正義から赦しの正義へ  共著   
春秋社  , 未設定  , 326 p.  , 2005/02   

概要(Abstract) 旧約聖書におけるヘブライ語の語根ṣdq(ツァーダク)の派生語は、伝統的に「正義、正しい」と訳されてきたが、応報や処罰という意味での正義としては理解できない。旧約の語根ṣdqの派生語には2つの基本的な用法が認められる。第1は二者の関係における特定の行為に肯定的評価を下す用法で、そこではこれらは交わりにおかれた相手への信実を意味する。第2は王の国家統治または神の宇宙統治の原理を表わす用法であり、この用法には、エジプト・メソポタミアにおける王権国家に正当性を付与する言説における正義の概念との類似点が認められる。旧約でも周辺地域でも統治原理としての正義の中心には弱者を擁護する社会正義がおかれている。ヤハウェ宗教では、社会正義は、一方では、来るべき理想の王もしくはヤハウェの宇宙統治の原理となり、他方では、ヤハウェが交わりを結んだ民全体の務めとなる。後者では、社会正義の実践が信実なるヤハウェに対して個々人がなす信実の業とされており、弱者擁護の正義と神への信実としての正義が統合されている。 

備考(Remarks) 執筆担当部分「信実なる正義—旧約聖書におけるツェダカー、ツェデク、ツァディーク—」pp. 87-101 

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学術論文
年度
Year
論文題目名
Title of the articles
共著区分
Collaboration
   Classification
NeoCILIUS
   請求番号/資料ID
Request No
掲載誌名 Journal name,出版機関名 Publishing organization,巻/号 Vol./no.,頁数 Page nos.,発行年月(日) Date
2022  マソラ本文箴言16章1–9節における並行法と構造  単著   
アカデミア 人文・自然科学編  , 南山大学  , 24  , pp. 165-181  , 2022/06   

概要(Abstract) 本研究では,第二神殿期ユダヤ教で形成された文書である箴言の第2部分(10:1–22:16)が精巧に構成された作品である証拠を提示するために,マソラ本文箴言16章1–9節に見られる詩行間の意味,文法,音声の面における並行法を分析し,これらによる構造を明らかにする。16章1–9節には,主として2つの構造がみられる。第一は,語の反復による二重の囲い込み構造(A 1節,B 2節,B' 7節,A' 9節)であり、第二は,詩行の意味による構造である。後者は,2つの三つ組み(1–3節,5–7節),補足(4節,8節),結び(9節)からなる。第二の構造では,詩行間は意味だけではなく,統語法,語や句の順序,語形,音声の対応関係によっても結ばれている。第2部分全体について,意味だけではなく,統語法,語順,語形,音声の対応関係を分析することによって,アフォリズム文学の一作品である箴言第2部分の文学的構造の解明は促進されると考えられる。 

備考(Remarks)  

2019  「知恵文学」の概念に関する近年の議論―主要な論点と箴言研究に対する意義―  単著   
南山神学  , 43  , pp. 1–34  , 2020/03/31   

概要(Abstract) 近年、M.スニード、S.ウィークス、W.カインズによって旧約学における「知恵文学」概念の問題点が指摘され、他の研究者を加えた活発な議論が展開されている。本稿では、はじめに今回の議論参加者が共有する新しい文学ジャンル理論を確認し、次に議論の背景として旧約学で普及している「知恵文学」の概念を、旧約の文書のカテゴリー、文学ジャンル、運動・伝統・世界観の3点に分けて示す。そしてこの中で知恵の世界観(すなわち人生で観察される諸々の規則性の背後に1つの世界秩序があると信じる立場)および国際的知恵運動の説に対してすでに1990年代に適切な批判がなされたが、それが十分に浸透しないため、再びこれらが俎上に載せられていることを指摘した後、今回の新たな論点をまとめる。
スニードは、近年の書記文化研究に基づき、「知恵文学」を作成した書記学者たちは救済史や契約に中心をおく神学に反対する特有の世界観をもっていたわけではなく、聖書の他のタイプの文書の作成・保存にも従事していたと言う。ウィークスは、「知恵文学」というジャンルの有用性を疑問視し、古代近東の読者に知られていたジャンルとして教訓とアフォリズム文学の2つを定め、これらを用いるべきだと主張する。カインズは、「知恵文学」概念の起源は19世紀のドイツにあり、その歴史的状況に由来するイデオロギー的性格をもつことを指摘し、解釈を狭める効果を持つ旧約の「知恵」というカテゴリーを廃止し、1つの作品は複数のジャンルに参加できるという新しい理論に従って多数のジャンルを発見的方法として用いることを提案する。
「知恵」カテゴリーによる束縛からの解放は、「知恵文学」の1つとされる箴言の研究にも新しい機会をもたらす。例えば、箴言と律法の関係の再検討や教訓というジャンルの観点によるテクスト分析など。それらは箴言理解を促進すると思われる。 

備考(Remarks)  

2019  魅力ある女は名誉を摑む/自分自身に報いる者だ、友愛に富む男は—ヘブライ語聖書箴言11章16−22節の構造と意味—  単著   
『一神教世界の中のユダヤ教 市川裕先生献呈論文集』  , リトン  , pp. 113–133  , 2020/01/31   

概要(Abstract) 箴言の第2部分(10:1–22:16)には文法的に完結した1詩行からなるアフォリズムが並列されている。聖書学にはこの部分がアフォリズムを無作為に配列した収集体だとする説と意図的に配列した構成体だとする説があり、論争が続いている。本稿では後者の説の論証の一環として、小規模ユニット11章16–22節を取り上げ、ユニットの形成の手法と構造を明らかにし、その意味について考察する。このユニットは、用語、語形、統語法、意味の対応関係によってアフォリズムが相互に結ばれた3つのペア(11:16-17, 18-19, 20-21)と枠付け(11:16, 22)からなる。3つのペアには、正しい者と邪な者の対照という主題の共有だけではなく、主題的発展がみられる。また、はじめに倫理的に一義的ではないアフォリズム(11:16)を置き、その後に倫理的なアフォリズムを続け、はじめのアフォリズムの解釈の方向を示唆する点には、教育的な意図を認めることができる。対照的な女による全体の枠付けは、読者として想定される若い男に妻選びの示唆を与えていると考えられ、その点で男性中心的であるが、女にも男同様に他者のために善をなす親切と道徳的判断力を求めている点では平等だということができる。 

備考(Remarks)  

2018  フクシマ後に、聖書を読む  単著   
神学ダイジェスト  , 上智大学神学会  , 第125号  , pp. 55-61  , 2018/12   

概要(Abstract) 雨と海の豊かな恩恵を享受する日本列島において2011年に起こった東日本大震災の津波と原発事故の経験を、ヘブライ語聖書(キリスト教聖書の旧約)における創造主と水と人間の関係を語るテクスト(創1章; 詩69編, 104編; 創8章)、また人間の文明の企てを語るテクスト(創11章)に照らして考察する。 

備考(Remarks) ドイツ語論文 "Die Bibel lesen nach Fukushima", 2012年, Concilium: Internationale Zeitschrift für Theologie 48 (5) pp. 562-567の著者による日本語訳。 

2016  箴言第II部の格言における二句一組の形式に関する一試論—並行法の<新定義>を参照して—  単著   
旧約学研究  , 日本旧約学会  , 第12号  , pp. 59-82  , 2016/04/01   

概要(Abstract) 箴言第2部分(10:1–22:16)の格言の構成法の解明には並行法理解が重要である。18世紀R.ラウスは、聖書ヘブライ詩の特徴は意味的または形態的対応関係をもつ句から1つの詩行を構成する点にあるとし、この対応関係を並行法と名づけ、またそれを同義的、対立的、総合的(=構造的)の3つに分類した。ラウスは並行法には意味と形態(すなわち統語構造)の2つの面があると認識していたが、意味だけを分類の判定基準とし、しかも同義と対立以外の意味的対応関係を認めなかった。20世紀初頭にG.B.グレイは用語の対応関係を必須とする定義を示し、また1970年代以降意味ではなく統語構造の対応関係を並行法とする言語学的定義が現れた。並行法の範囲を限定するこの流れに対して、1980年代に並行法の仕組みと意味の多様性をふまえた〈新定義〉が現れた。J.クーゲルは、多様な意味的関係をもつ並行法において後句が前句の意味に強化や進展を加えるという共通性があること、それこそが並行法の本質だと指摘した。R.オルターも同様に後句で強化・進展する意味の運動を詳述した。他方、A. バーリンは言語学的研究に基づき、並行法とは文法、意味、音声という3つの面、および語と句という2つのレベルで言語学的等価の要素を結びつける現象であるという広い定義を示した。箴言第2部分の格言の9つの具体例(箴10:5; 16:4, 12; 19:3; 21:31; 15:17; 20:27; 10:2; 10:12)の分析は〈新定義〉の正しさを支持する。今後は〈新定義〉を参照したさらなる具体例の分析を通して格言の構成法を明らかにする必要がある。 

備考(Remarks)  

2014  箴言の二行詩格言集における知恵の教育法  単著   
聖書学論集  , 日本聖書学研究所  , 第46号  , pp. 19-40  , 2014/10   

概要(Abstract) ヘブライ語聖書には2つの教育の伝統がみられるが、本稿はその1つである知恵の教育を主題とする。知恵の教育では勧告と格言という2つの基本的な様式が用いられる。知恵の教育活動を伝える知恵文学の1つの書である箴言には、勧告を語る教訓と格言を並列する格言集という2つの文学ジャンルがみられる。両者では教えの伝え方が異なる。勧告を語る教訓は、禁止や命令によって聞き手に直接的に行動の指針を与えるのに対して、格言を並列する格言集は、3人称の平叙文を並列し、聞き手がそれらの言葉の相互関係を捉え、真実を認識することを求める。格言集では教訓以上に強い主体性が聞き手に求められるのである。
本稿では、日常生活における観察、実生活における行為と結果、義と邪悪や賢と愚などの生き方、人の行為と神の活動などを簡潔に述べた格言の具体例を私訳によって引用し、格言を用いて読み手に真実の認識を促す教育法を示す。個別の格言(箴14:20; 26:20; 27:8; 20:17; 16:25; 11:15; 29:4; 11:2; 12:11; 10:11; 10:3; 16:14; 22:2; 19:14; 18:22; 19:21; 16:1; 16:9; 20:24; 21:30)、用語や主題によって結ばれた2つあるいは3つの格言のまとまり(箴11:24–26; 27:5–7; 14:20–21)、一部の言葉を変更して創り変えられた格言(箴10:15&18:11; 22:2&29:13)が取り上げられる。 

備考(Remarks) 聖書における教育思想をテーマとする公開講座の講演に基づく論文。 

2013  鉄は鉄を研ぐ―箴言(ミシュレー)第II部、第V部におけるレア(rēa‘ I) ―  単著   
聖書学論集  , 日本聖書学研究所  , 第45号  , pp. 1-24  , 2013/04   

概要(Abstract) 箴言の第II部(10:1–22:16)と第V部(25–29章)は簡潔な格言と勧告の集成であるが、格言や勧告が共通の用語、主題、構文、音声などによって結ばれ文学的まとまりをなす箇所がある。本稿では箴言のIIとVの執筆・編集背景研究の一環として、各部分における格言と勧告における家族外・親族外の日常的な交際相手であるレア(rēa‘ I) (「友人、仲間、隣人」)の像の特徴を、文学的文脈に示される社会像とともに明らかにする。形式と話題の点で異なる特徴が認められる下位部分、IIa(10-15章)、IIb(16:1-22:16)、Va(25-27章)、Vb(28-29章)の執筆・編集背景が異なる可能性を考慮し、これらを区別し、Va, IIb, IIa, Vbの順に論じる。
Va, IIb, IIaにはレアが近隣の居住者あるいは同じ地域共同体の成員であることを示す言葉があり、またVa, IIbには親族の連帯が弱体化し地縁的関係の重要性が増した環境を示唆する言葉がある。Vaにはそのような環境で望まれる誠実な友人・隣人、IIb, IIaには利己的目的で付き合う友人・隣人が現れる。IIa, IIb, Va, Vbのすべてでレアに対する悪が話題になるが、それは言葉によるものである。各下位区分の特徴をあげると、Vaでは、レアは社会的に対等な交際相手であり、対等な相手との交際のマナーと倫理が示される。IIbでは、貧富による社会的地位の変動とそれに伴う交際相手レアの態度の変化が主題化されている。IIaにはレアの侮辱を問題とする2つの格言があり、一方ではレアは都市共同体の成員を指し、レアの侮辱は都市共同体の破壊行為として位置づけられ、他方では、レアは同じ社会に生きる困窮者を指し、レアの侮辱は罪だと宗教的に意味づけられる。Vbにはレアは1回しか現れない。
IIaとIIbにはヤハウェに言及する言葉が多数あるが、レアに言及する言葉およびその文脈にはヤハウェへの言及がほとんどみられず、レアに関する格言と勧告は宗教的根拠付けを必要としない世俗的な知恵の伝承だと考えられる。この伝承とヤハウェへの言及を含む部分との関係の解明は今後の課題である。 

備考(Remarks)  

2012  Die Bibel lesen nach Fukushima  単著   
Concilium. Internationale Zeitschrift für Theologie  , Grünewald Verlag  , 48/5  , pp. 562-567  , 2012/12   

概要(Abstract) 雨と海の豊かな恩恵を享受する日本列島において2011年に起こった東日本大震災の津波と原発事故の経験を、ヘブライ語聖書(キリスト教聖書の旧約)における創造主と水と人間の関係を語るテクスト(創1章; 詩69編, 104編; 創8章)、また人間の文明の企てを語るテクスト(創11章)に照らして考察する。 

備考(Remarks) 『コンキリウム:神学のための国際雑誌』の水をテーマとする特集号に掲載。英語訳、イタリア語訳、スペイン語訳、同時出版。 

2009  義人たちは若獅子のように―箴言28-29章における義人、不法者、社会、国家―  単著   
聖書学論集  , 日本聖書学研究所  , 第41号  , pp. 67-88  , 2009/03   

概要(Abstract) ヘブライ語聖書におけるツァディーク(義人)とラーシャー(不法者)という対立語の用例は箴言と詩篇に偏在しているが、その歴史的位置づけについては意見が分かれている。本稿では、初期ユダヤ教におけるこの対立語の歴史的位置解明の予備的研究として、完結した知恵的言葉の集成である箴言28−29章における義人、不法者、社会、国家の像を明らかにする。箴言28−29章は、義人と不法者を対置する6つの言葉(28:1, 12, 28; 29:2, 16, 27)によって4つの小集成(28:2-11; 13-27; 29:3-15, 17-26)が囲い込まれるという構造をもち、個々の言葉は集成の文脈における意味を持つ。紙幅の都合上、義人と不法者を対置する6つの言葉、2つの小集成(28:2-11; 29:3-15)、終結部(29:26–27)に絞って試訳を示し、内容を考察する。
初期ユダヤ教のセクト運動では、終末の救いに与る義人と滅びに定められた罪人に社会を二分する二元論的な人間観が現われるが、このテクストに描かれる社会は義人と不法者に二分されておらず、その他に民衆、貧者が存在する。そこでは不法者による権力の掌握と貧者の圧迫・不正の蓄財がある一方、義人たちは支配者ではなく、公正を知り、神の教え(トーラー)を守り、地域社会で貧者に恵みを施し、裁判で貧者の権利を擁護し、民衆に歓迎される集団である。不法者たちにはいつか災いが訪れるが、ヤハウェを頼みとする義人たちは、若獅子のように安泰である。この集成の注目に値する点として、貧者が搾取あるいは保護の対象としてだけではなく、義人をも含む富者を批判的に吟味する目を持つ主体(28:11; 29:13)として描かれる点がある。またここでは、公正な社会秩序に責任を負うものとして、地域社会だけでなく、国家が現れるが、これを根拠に箴言28-29章の成立を王国時代に位置づけるべきかについては今後の検討課題である。 

備考(Remarks)  

2004  旧約聖書における「義」の概念形成前史(二)―語根ṢDQの意味領域に関する議論を手がかりに―  単著   
宗教と文化  , 聖心女子大学キリスト教文化研究所  , 第23号  , pp. 69-88  , 2004/03   

概要(Abstract) 前稿では旧約における語根ṣdqの意味に関する先行研究を検討し、旧約のこの語根に、K.コッホの指摘した「共同態的信実」を意味する用法だけではなく、王権の原理としての社会正義を意味する用法があることを明らかにし、またエジプト学者アスマンの研究書を参照して、古代エジプトにおけるマアト(正義)と国家の関係づけを概観した。本稿ではこれらを踏まえ、まず古代メソポタミアで弱者を救済する社会正義を意味する主要な用語となった名詞キットゥム(信実)とミーシャルム(正義)をとりあげ、法典の前文後文、王讃歌、勅令におけるそれらの用法を概観し、メソポタミアの王たちが裁判と勅令によって弱者を擁護し正義を実現したと主張して、統一国家を根拠づけようとしたことを示す。
次にこのアッカド語の対語の影響を受けて、ヘブライ語の対語「義(ツェデク)と公平(ミーショール・メシャーリーム)」および「義(ツェデク・ツェダーカー)と公正(ミシュパト)」が成立したと考えられることを示す。最後に王イデオロギーに起源を持つ「義と公正による王の裁き」の観念がヤハウェ信仰において新たに意味づけられた例として、詩編72編1–2節をとりあげる。72編1節では「義」と「公正」に「あなたの」が付加され、また「公正」がヤハウェの法的規定を意味する複数形に変えられている。この変更によってこの詩編は、王による社会正義の実現には、契約を結んだ民への神の信実が先立つことを明らかにする。民に対する信実の業(「あなたのツェダーカー」)として神が法的規定(「あなたのミシュパト複数形」)を王に与えてはじめて、王は社会正義を実現できるというのである。 

備考(Remarks)  

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その他研究業績
年度
Year
題名等
Titles
カテゴリ
Category
細目
Authorship
掲載雑誌名等 Publishing Magazine,発行所 Publisher,巻/号 Vol./no.,頁数 Page nos.,発行年月(日) Date
2021  書評 長谷川修一著『「旧約聖書」—〈戦い〉の書物』  書評  単著 
オリエント  , 64-1  , 63–69  , 2021/09   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2020  知恵ある者たちのアフォリズム 最終回 知恵批判  寄稿  単著 
福音宣教  , オリエンス宗教研究所  , 2020年12月号  , pp. 44-50  , 2020/12/01   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2020  知恵ある者たちのアフォリズム⑩労苦と時と神の業  寄稿  単著 
福音宣教  , オリエンス宗教研究所  , 2020年11月号  , pp. 44-50  , 2020/11/01   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2020  月本昭男著『詩篇の思想と信仰V』唯一神信仰の理解へ−祈りと讃美の言葉を通って  書評  単著 
本のひろば  , 日本キリスト教書販売  , 2020年11月号  , pp. 16-17  , 2020/11/01   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2020  知恵ある者たちのアフォリズム⑨「すべては空」と言った王  寄稿  単著 
福音宣教  , オリエンス宗教研究所  , 2020年10月号  , pp. 43–49  , 2020/10/01   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2020  知恵ある者たちのアフォリズム⑧コヘレト書の構造と一体性  寄稿  単著 
福音宣教  , オリエンス宗教研究所  , 2020年8・9月号  , pp. 60–66  , 2020/08/01   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2020  知恵ある者たちのアフォリズム⑦知恵と知識を学ぶこと  寄稿  単著 
福音宣教  , オリエンス宗教研究所  , 2020年7月号  , pp. 44-50  , 2020/07/01   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2020  知恵ある者たちのアフォリズム⑥神の計らいと人の責任  寄稿  単著 
福音宣教  , オリエンス宗教研究所  , 2020年6月号  , pp. 44-50  , 2020/06/01   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2020  知恵ある者たちのアフォリズム⑤文脈におかれたアフォリズム  寄稿  単著 
福音宣教  , オリエンス宗教研究所  , 2020年5月号  , pp. 44-50  , 2020/05/01   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2020  知恵ある者たちのアフォリズム④未熟な者たちへの親の諭し  寄稿  単著 
福音宣教  , オリエンス宗教研究所  , 2020年4月号  , pp. 44-50  , 2020/04/01   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

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研究発表
年度
Year
題目又はセッション名
Title or Name of Session
細目
Authorship
発表年月(日)
Date
発表学会等名称 Name, etc. of the conference at which the presentation is to be given, 主催者名称 Organizer, 掲載雑誌名等 Publishing Magazine,発行所 Publisher,巻/号 Vol./no.,頁数 Page nos.
2023  箴言12章1–14節における構成と意味  単独  2023/09/25 
日本聖書学研究所9月例会  , 日本聖書学研究所   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2017  「知恵文学」概念を問う:近年の研究の諸論点と新たな展開の可能性  単独  2017/06/14 
春期旧約学会  , 日本旧約学会   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2016  ヘブライ語聖書「知恵文学」の歴史社会的考察—研究史上の諸問題と新たな展開の可能性  単独  2016/11/25 
南山学会人文・自然系列研究例会  , 南山学会   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2015  箴言第二部(10:1-22:16) の主題的研究における格言集合体の取扱い方法について  単独  2015/10/19 
日本聖書学研究所例会  , 日本聖書学研究所   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2014  箴言第II部(10:1-22:16)の二行詩格言の並行法―二詩行の関係とその効果  単独  2014/11/03 
日本旧約学会秋期学会  , 北星学園大学   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2012  『箴言(ミシュレー)』におけるレア rēa‘ (友人、仲間、隣人)―格言の集成による議論と反省  単独  2012/4/16 
日本聖書学研究所4月例会  , 日本聖書学研究所   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2006  『箴言』の格言集(10:1-22:16; 25:1-29:27)の歴史的位置づけのための方法論的一考察  単独  2006/10/16 
日本聖書学研究所例会  , 日本聖書学研究所   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

2003  イスラエルとユダにおける王権神学  単独  2003/09/04 
日本宗教学会第62回学術大会  , 天理大学  , 宗教研究  , 日本宗教学会  , 77 (4)  , pp. 202-203   

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備考(Remarks)  

2000  旧約聖書における正義(ṢDQ)―古代東方的背景を顧慮して  単独  2000/10/12 
聖心女子大学キリスト教文化研究所例会  , 聖心女子大学キリスト教文化研究所   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

1999  初期ユダヤ教における賢者と書記  単独  1999/09/18 
日本宗教学会第58回学術大会  , 南山大学  , 宗教研究  , 日本宗教学会  , 第323号  , pp. 121-122   

概要(Abstract)  

備考(Remarks)  

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教育活動
年度
Year
タイトル
Title
内容等
Content
活動期間
Period of Activities
2022  授業教材作成 

・「聖書入門A」:配付資料の加筆・修正。
・「旧約聖書学(預言書A)」「旧約聖書学(預言書B)」:配付資料の加筆・修正。
・大学院科目「旧約研究」:授業資料を新たに作成。
 

2022/04/01〜2023/03/31 
2021  授業教材作成 

・「旧約聖書学(歴史書)」「旧約聖書学(詩と知恵)」:配布資料を加筆・修正。
・「聖書ヘブライ語中級I」「聖書ヘブライ語中級II」:授業資料を新たに作成。
・大学院科目「旧約研究」:授業資料を新たに作成。 

2021/04/01~2022/03/31 
2020  授業資料作成 

・「聖書入門A」:オンライン授業の資料作成。
・「旧約聖書学(モーセ五書A)」「旧約聖書学(モーセ五書B)」:オンライン授業の資料作成。
・「聖書ヘブライ語初級I」「聖書ヘブライ語初級II」:オンライン授業の資料作成。
・大学院科目「旧約学研究」:オンライン授業の資料作成。 

2020/04/01〜2021/03/31 
2019  授業教材作成 

・「聖書入門A」:配付資料の加筆・修正。
・「旧約聖書学(預言書A)」「旧約聖書学(預言書B)」:配付資料の加筆・修正。
・大学院科目「旧約研究」:配付資料を新たに作成。 

2019/04/01〜2020/03/31 
2018  授業教材作成 

・「聖書入門A」:配付資料の加筆・修正。
・「旧約聖書学(歴史書)」「旧約聖書学(詩と知恵)」:配布資料を新たに作成。
・「聖書ヘブライ語(初級)I」「聖書ヘブライ語(初級)II」:副教材の加筆・修正。
・「聖書ヘブライ語中級I」「聖書ヘブライ語中級II」:授業資料を新たに作成。 

2018/04/01〜2019/03/31 
2017  授業資料作成 

・「聖書入門A」:配付資料の加筆・修正。
・「旧約聖書学(モーセ五書A)」「旧約聖書学(モーセ五書B)」:配付資料を新たに作成。
・「聖書ヘブライ語(初級)I」「聖書ヘブライ語(初級)II」:副教材の加筆・修正。 

2017/04/01〜2018/03/31 
2016  授業教材作成 

・「聖書入門A」:配付資料を新たに作成。
・「旧約聖書学(預言書A)」「旧約聖書学(預言書B)」:配付資料を新たに作成。
・「聖書ヘブライ語(初級)I」:副教材(あいさつ・フレーズ・歌)を新たに作成。
・「聖書ヘブライ語(初級)II」:副教材(歌)、Webclass教材を新たに作成。 

2016/04/01〜2016/03/31 
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研究活動/社会的活動
年度
Year
活動名称
Name of activities
活動期間
Period of Activities
2013  日本聖書学研究所2013年度公開講座「聖書における教育思想」  2013/11/09 

活動内容等(Content of Activities) 講演題目「箴言第二部、第五部における二行詩格言集の教育法」 

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著書・学術論文に関する統計情報
年度
Academic Year
学術研究著書の件数
No. of Academic Books
学会誌・国際会議議事録等に掲載された学術論文の件数
No. of Academic Articles in Journals/Int'l Conference Papers
学内的な紀要等に掲載された学術論文の件数
No. of Academic Articles Pub'd in University Bulletins
学会受賞等の受賞件数
No. of Academic Awards Received
国際学会でのゲストスピーカーの件数
No. of Times as Guest Speaker at Int'l Academic Conferences
国際学会での研究発表の件数
No. of Presentations of Papers at Int'l Academic Conferences
国内学会でのゲストスピーカーの件数
No. of Times as Guest Speaker at National Academic Conf.
国内学会での研究発表の件数
No. of Papers Presented at National Academic Conf.
2023 
2022 
2021 
2020 
2019 
2018 
2017 
2016 
2015 
2014 
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2024/04/25 更新