研究者詳細

研究助成
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年度
Year
助成名称または科学研究費補助金研究種目名
Name of grant or research classification for scientific research funding
研究題目
Research Title
役割(代表/非代表)
Role
助成団体
Granting body
助成金額
Grant amount
2018  科学研究費補助金  受刑者の社会復帰に資する憲法学解釈の刷新―国際人権法に基づく司法の関与の検討 
代表  日本学術振興会   

研究内容(Research Content) 第1に、ヨーロッパ人権裁判所は、刑事施設内の処遇環境に関して、共同室の被収容者1人あたりの床面積の広さ、施設内の衛生環境、昼夜間独居拘禁・裸体検査・常時監視の継続期間等に着目して、拷問や非人道的な取扱い等を絶対的に禁じたヨーロッパ人権条約3条違反を認定している。ある程度類型的な基準を示した上で、施設内処遇について実体面から条約違反を認定する点は、刑事施設被収容者の権利保障を担保する上で大きな意義がある。そこで、刑事施設内の処遇環境の条約3条適合性が論点となった事件における判例法理の展開について、ヨーロッパ拷問等防止委員会が示す諸基準等も参照しつつ検討・分析した。
第2に、イギリスが再三にわたるストラスブールの諸判決や勧告を事実上無視し続け(受刑者の選挙権)、ヨーロッパ人権裁判所自身が国内裁判所との「対話」によって受刑者の権利保障水準を事実上後退させた事例(仮釈放の可能性のない無期刑)が示すように、ヨーロッパにおいても国際人権法が求める権利保障水準の国内実施が困難化している現象が見られるものの、近年の一部の日本の最高裁判決・決定から示唆されるように、国際人権法規範の参照は、刑事施設被収容者の権利保障にとって有力な理論的根拠の1つとなることを論じた。
第3に、拘禁期間の延長を伴う懲罰は刑罰に相当するとして、公正な裁判を受ける権利を保障したヨーロッパ人権条約6条上の適正手続保障が及ぶとした2003年10月のヨーロッパ人権裁判所大法廷判決と、仮釈放の可能性のない無期刑が同条約3条に抵触するとした2013年7月のヨーロッパ人権裁判所大法廷判決の意義について、日本の受刑者の権利論からみた意義も含めて検討した。 

備考(Remarks)  

2017  科学研究費補助金  受刑者の社会復帰に資する憲法学解釈の刷新―国際人権法に基づく司法の関与の検討 
代表  日本学術振興会   

研究内容(Research Content) 第1に、ヨーロッパ人権裁判所は2013年に、人間の尊厳や社会復帰処遇の重要性から、ヨーロッパ人権条約3条は、仮釈放の可能性を認めない絶対的無期刑に対して、一定期間の服役後に仮釈放可能性を求めているとの判断を下した。イギリスの国内法規は、絶対的無期刑の仮釈放要件を死期の切迫等に限定しており、拘禁の継続が同条約3条上禁じられる非人道的又は品位を傷つける処遇に達した場合に、行刑実務が仮釈放を認めているかが定かではないとして、同条約違反を認定した。他方で、ヨーロッパ人権裁判所は2017年に、国内法規の解釈は一義的には国内裁判所が適しているとした。そして、当初の量刑を正当化できなくなる例外的事情がある場合には、国内法規の文言に関わらず絶対的無期刑受刑者の仮釈放可能性が認められるとした2014年のイギリス控訴院判決に従って、イギリスの絶対的無期刑の同条約違反を否定した。イギリスの国内法規が改正されていないにもかかわらず、ヨーロッパ人権裁判所がわずか数年でイギリスに対する条約違反判決を覆し、人権保障水準を事実上後退させたことは、厳罰化政策への支持に加えて反ヨーロッパ感情が渦巻くイギリス国内の状況を斟酌したことが推測される。この点を含む研究成果を、共著として刊行した。
第2に、一般に、政治部門や世論の支持を得ることが容易ではない刑事施設内の処遇水準を改善するためには、司法府の一定の積極的な判断が重要な牽引力の1つとなる。近年の一部の最高裁判決・決定が示唆するように、受刑者の権利・自由に一定の判断の蓄積がある国際人権法を参照することは、司法府が受刑者の権利・自由により親和的な判断を行う契機となりうる。この点について、今後の関係が懸念されるイギリスとストラスブールの関係について、少なくとも受刑者訴訟の文脈からすると、現行の人権法の枠組を維持すべき意義がある点を検討し、英語で報告した。 

備考(Remarks)  

2016  科学研究費補助金  受刑者の社会復帰に資する憲法学解釈の刷新―国際人権法に基づく司法の関与の検討 
代表  日本学術振興会   

研究内容(Research Content) 本研究の目的は、受刑者の円滑な社会復帰の前提となる刑事施設内の処遇環境に着目し、拷問や非人道的な取扱いなどを禁じたヨーロッパ人権条約3条を1つの着眼点に据えてヨーロッパ人権裁判所やイギリスの国内裁判所の判例展開を考察することで、日本における、受刑者の権利保障に資する判断枠組みのあり方を考察することにある。平成28年度は、「国際人権法の視点を採り入れた受刑者の実効的な権利保障に向けて」(河合正雄代表、若手研究(B)(平成26~27年度、研究課題番号:26780008))の研究成果をふまえつつ、次の検討を行った。
ヨーロッパ人権裁判所は2008年に、仮釈放の可能性を認めない絶対的無期刑は、ヨーロッパ人権条約3条が禁ずる「非人道的な刑罰」に該当する可能性があることを認めた。同裁判所は2013年に、イギリスの絶対的無期刑が「非人道的な刑罰」に該当するとして、実際にヨーロッパ人権条約3条違反判決を下した。その後の同裁判所の判決でも、事後的に絶対的無期刑を見直す基準が不明瞭である場合や、最初の絶対的無期刑の見直しをする年限が服役開始から25年を大きく上回る場合にヨーロッパ人権条約3条違反を認定するなど一定の判断が下されており、判決法理の展開が見られたことを確認・検討した。
昨今のヨーロッパ諸国で高まっている反EU感情のあおりを受け、ストラスブールと締約国との間でも一定の政治的緊張が生じる場面が出ており、受刑者の権利のような国民感情を刺激しかねない事案では、ヨーロッパ人権裁判所は積極的な条約違反認定に躊躇する場合がある事が推測される。しかしそれでも、絶対的無期刑は、国際人権法上許容されないというコンセンサスが形成されつつあることが示唆された。 

備考(Remarks)  

2015  科学研究費補助金  国際人権法の視点を採り入れた受刑者の実効的な権利保障に向けて 
代表  日本学術振興会   

研究内容(Research Content) 平成27年度は、前年度の検討を継続して個別具体的な受刑者訴訟に焦点をあてつつ、受刑者の権利保障をめぐるヨーロッパ人権裁判所の判例動向の把握に努め、以下の検討を行った。
第1に、人間にとって根源的な行為とも言える生殖の自由に着目し、受刑者の人工授精を厳しく制約したイギリスの行刑実務に対してヨーロッパ人権条約違反を認定した判決を題材とした論文を刊行した。判決は、受刑者が人工授精の利用を求める権利が条約上の射程に入ることを承認しており、少なくとも、受刑者の生殖の自由の拒絶が自明視できないことが見出された。
第2に、十年来続く受刑者の選挙権を一律に剥奪する英国法の改正を求めるストラスブールと、これに強く抵抗するイギリスとの膠着状態について検討を進めた。その上で、一部の受刑者に対する選挙権付与を求めているにすぎないヨーロッパ人権裁判所の判例法理を確認した英国の最高裁判所判決に着目した論文を刊行した。
第3に、刑事罰に相当すると判断される重い懲罰を科す際にはヨーロッパ人権条約上の刑事手続上の権利保障を要するとした判決を受け、これらの懲罰を科すにあたっては刑事施設から独立した法曹に審理させるなど、イギリスの行刑実務が手続適正化に向けて変容した点を検討した。
第4に、日英に共通する厳罰化傾向を念頭におき、仮釈放の可能性を事実上認めないイギリスの絶対的無期刑に対して、国際人権諸法規の発展をふまえつつ、社会復帰処遇の重要性をヨーロッパ人権条約3条に読み込んだ判例を引き続き検討した。受刑者の円滑な社会復帰の実現に向けた司法機関の関与の可能性については、「受刑者の社会復帰に資する憲法解釈学の刷新―国際人権法に基づく司法の関与の検討」(河合正雄代表、若手研究(B)(研究課題番号:16K16981))における課題として検討を継続する。 

備考(Remarks)  

2014  科学研究費補助金  国際人権法の視点を採り入れた受刑者の実効的な権利保障に向けて 
代表  日本学術振興会   

研究内容(Research Content) 本研究の目的は、受刑者の権利・自由に関するヨーロッパ人権裁判所とイギリスの国内裁判所の判例動向を探り、日本における、受刑者の権利保障により資する判断枠組みのあり方を考察することにある。平成26年度は、特定の権利・自由の制約に焦点をあて、ヨーロッパ人権裁判所とイギリスの国内裁判所の判例動向を検討した。具体的には、次の研究を行った。
第1に、仮釈放の可能性を認めない絶対的無期刑はヨーロッパ人権条約3条に反するとした、ヨーロッパ人権裁判所の判例を検討した。ヨーロッパ人権裁判所は、国際人権諸法規も参照しつつ、刑が確定した時点では適切な量刑であったとしても、一般に自由刑の目的とされる「公衆の保護」や「社会復帰」の要素については、処遇効果等によって事後的に変化しうる点も根拠にあげており、社会復帰処遇の重要性を意識していることが見出された。
第2に、収容期間の延長を伴う懲罰は刑事罰に相当するとして、刑事手続上の権利の保障を認めた判例を検討した。ヨーロッパにおいては、行刑運営の根幹である懲罰権の行使においても、刑事手続に準じた権利保障を及ばせる方向に向かっている事が示唆された。
第3に、受刑者の選挙権を全面的に剥奪するイギリスに対して、選挙権を付与する法改正を繰り返し求めるヨーロッパ人権裁判所と、厳罰化政策やナショナリズム感情からこれに強く反発するイギリス国内の状況について検討した。ストラスブールと、イギリス国内の世論や政治部門の双方から一定の距離を保ちうるイギリスの国内裁判所の立ち位置が、問題解決の糸口となる可能性がある。 

備考(Remarks)  

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